2002年9月21日(土)
九月大歌舞伎 昼の部 歌舞伎座 談春独演会 お江戸日本橋亭
まずは歌舞伎座、37年ぶりの「怪異談牡丹燈籠」の通し上演。
落語では「お露新三郎」「お札はがし」「栗橋宿」ぐらいしか
掛かり難い。
以前、鳳楽師が2時間半で通した事があるが、この時も孝助の
仇討はカットされた。
実は孝助が一番物語全般に関わるのだが、この人物を描くと
時間も掛かり、肝心のカランコロンが時間的に入れ難くなるのが、
その理由だったかな。
今回の歌舞伎上演では3時間半と幾分余裕もあるので、吉右衛門が
孝助と伴蔵の二役で二度の仇討場面もあり。
それでもこの話を通すにはやはり時間が足りず、圓朝の速記を
読んだ人なら問題ないが、初めてこの話に接した人には
どうだったんだろう?
少々判らなくても、十分楽しめる芝居だったとは思うが...
ちょっと時間を潰しにビールを呑んで、日本橋亭へ。
談春独演会は、「へっつい幽霊」と「ねずみ穴」。
で、この「ねずみ穴」が秀逸だった。
人間の感情の振幅の幅を軸にした解釈。
凄く凶暴な人は、家族に対しては凄く優しい。
逆に感情の振幅の幅が小さい人は、怒りも喜びも平板。
竹二郎も、最初は兄に冷たくされた怒りから商売に励むが
女房をもらって娘が生まれてからは、家族大事で商売に励む。
負の感情で基礎を作り、正の感情で身代を築く。
兄へ礼に行く時も、負の感情で怒りをぶちまけるが、兄の
真意を知ってからは一気に正の側に針が振れ、わだかまりが
解けるどころか、感謝の気持ちで一杯になる。
噺としてはスタンダードではあるが、感情の振幅の幅が
大きい人物として竹二郎を描く事で、説得力が高まった
ように感じた。
2002年9月18日(水)
夜もすがら検校
公私ともに訃報続きで、気が付けば1年近く放ったらかし...
景気づけってわけでもないけど、3月ちょっと前の元気な
爺さんの芝居の話。
島田正吾、御歳九十六歳。
池波正太郎作「夜もすがら検校」を毎年恒例のひとり芝居に
二幕1時間半で掛けた。
「ひとり芝居」は、今回で12回目。毎年2日ずつの公演。
一年を 二日で暮らす 良い役者
が、御大のキャッチフレーズ。(^_^;)
お話は、平家琵琶の名手・玄城検校が、江戸からの帰り路
番頭に金を奪われ難渋しているところを、無一文の土地の
若者・若蔵が助けるところから始まる。
すでに家も田地田畑も人手に渡り、今は空き家の元我が家に
連れ帰って介抱するも焚木が無い。
人の物になっている家に手を付けるわけにもいかないので、
背負って旅立つつもりでいた仏壇を焚木に使い検校を
暖める。
幸い検校の襟元に一分金が引っ掛かっているのを発見し、
検校は京へ帰る。
4年後、検校の名声はさらに上がり、御所での演奏も
決まったある日、若蔵が訪ねて来る....
と、いった感じ。
二幕目、御所での演奏が決まった場面からは、千代田区で
一番大きな家に住んでるおかみさんも観劇。
#演出されてたのかな?
声にも張りがあるし、立ち居振る舞いは工夫でカバー。
九十九歳でのひとり芝居を目標にしている御大。
まだまだ、いけそう。
「十時半睡事件帳」、再放送してくれないかな。